会話のテーブル
2021年3月22日号
リライフアカデミー講師・公認心理師 花形先生
こんにちは。カウンセラーの花形です。
皆さんは、周りの人から言われた一言、もしかして悪意のない一言かもしれないけれど、深く自分に突き刺さり、グルグル頭を巡りモヤモヤしてしまうこと、ありませんか?
今日はそんな時にイメージして頂きたい「会話のテーブル」のお話です。
私たちは一人に一台、目には見えない会話のテーブルをはさんで人と接しています。
相手から発せられた言葉は、実は必ずこのテーブルの上を経由して自分に届いているのです。
カフェで注文した料理は必ず目の前のテーブルに供され、直接手渡されたり、ましてや口の中に放り込まれたりはしませんよね。あなたはそのお料理を「熱いからちょっと冷ましてから食べよう」とか「少し味が薄いからお塩をかけよう」とか「思ったより脂っこいからもう食べられないかな」とか、自分の好きに工夫して食べることをおそらく迷うことはないでしょう。
相手の言葉に振り回されてしまうのは、「言葉」という料理をこのプロセスをすっ飛ばして直接飲み込んでしまっている状態と一緒なのです。
そんなことをしたら口の中を火傷してしまったり、胃にもたれたり、お腹を壊してしまって当然です。
つまり、他者と接する際も、大切な自分を自分で守るためのテーブルが必須なのです。
カフェではないから注文していないのに突然あなたのテーブルに言葉が置かれることもあるでしょう。
でもあなただけの大切なテーブルなのだから、あなたの枠組みや状況で、美味しいって嬉しく頂くか、ちょっと保留して横によけるか、捉え方を変えてみるか、これはいらないなと線を引き、払ってしまうことは自由なのです。
大切な自分のお気に入りのテーブルをいつも美しくすっきりと心地よく保つことは、そのままあなた自身を大切にすることだから。
美しく整えられたテーブルは不思議と周りからも大切に扱われます。これは於保先生がおっしゃる自分を宝物の様に大切に扱う効果と同じですよね。
逆に、「こんなこと言ったら嫌われるかも?」と自分の言葉を飲み込んでしまうこともあるでしょう。
大丈夫。
だってあなたと同様に、相手もみんな一人に一台、会話のテーブルを携えているのだから。あなたは言葉を直接相手に放り込んだのではなく、相手のテーブルに置いただけ。それをどうするかは、相手の枠組み、状況次第なのです。
また、大切な相手に大切な気持ちを伝えるときは、相手が受け取り易いよう、食べ易いよう工夫することもポイント。ご飯に梅干しのせてハイって置くより、おにぎりにしてのりを巻いて出した方が相手もパクっと食べやすいですものね。
コミュニケーション法では「Iメッセージ」という、「私」を主語にして「自分の気持ち」を伝える、相手が否定的にとらえず受け取りやすい調理方法があります。
「あなた、○○だから、△△してよ」という「YOUメッセージ」でなく、「私は、○○だから、■■って感じたんだ」というように。
さあ、今日からあなただけの大切な「会話のテーブル」をイメージして、自分を守りながら豊かに相手とコミュニケーションしていきましょう。
ちなみに私のテーブルは白の木目調の丸形の猫足テーブル。いつもきれいに拭いてあげて、曲線の優しいフォルムのガラスの一輪挿しに、今日は薄桃色のスイトピーを活けました。
あなたのテーブルはどんなテーブル?
公認心理師 花形
私は普段相手の言い方をとても気にしてしまいます。「何でそんな言い方するんだろう」「そんな風に伝えても相手に伝わる訳ないのに」と相手の言い方が気に食わないと、いつも心の中でこう思っています。そして、必要以上に傷ついたりもしてしまいます。それは私自身が、どうしたら相手が気分を悪くせず自分の話を聞いてくれるか、という事常に意識して話しているからこそ気になってしまうのです。そのためどうやって伝えるか考え込んでしまう時もあります。
でも、会話のテーブルの回を読んで、「なるほど、そうやって考えたらいいのか」と、とても納得できました。そうすれば、私も考え込むこともないし、相手の言葉にいちいち傷つかなくていいのか、と。
また、「Iメッセージ」についても、子どもに対してついつい「YOUメッセージ」で叱ってしまっていることに大反省しました。子どもだから大丈夫、と心のどこかで思ってしまっていました…。
これからは、相手ではなく「自分がどう思うか」を大切に会話をもっと楽しめたらいいなと思いました。