今日は不思議な物理の話をしたいと思います。みなさんは量子という言葉をご存知でしょうか。

量子とは、粒子と波の性質をあわせ持った、とても小さな物質やエネルギーの単位のことです。物質を形作っている原子そのものや、原子を形作っているさらに小さな電子・中性子・陽子といったものが代表です。光を粒子としてみたときの光子や、ニュートリノなどといった素粒子も量子に含まれます。

私たちの身体、宇宙の惑星恒星まで、あらゆるものは突き詰めれば量子から成っています。この量子は、小さすぎるが故にこれまで一般的に我々が理解している法則とは違う動きをします。物を落とすと垂直に下に落ちる現象（万有引力の法則）といった、伝統的な古典力学とは全く違った法則にしたがって、量子は動いています。

診療の中における患者さんの変化を観察していくと、自分関係を良くしていった患者さんは、自己肯定感が強くなり、安心したりホッとしたり、嬉しい気持ちを大事にするようになり、自信が湧いて来るようになる傾向があります。そうすると、患者さん自身は心身の調子が良くなり、健康を回復しやすくなりますが、不思議と患者さんの周囲の人間やご家族も、影響されて変化していく現象をしばしば訴えるのです。

この現象は、教育現場や会社組織などでも、管理者や担任の先生が変わることによって、生徒や社員の雰囲気が変わっていくというような社会学的現象として理解はできるものの、なぜそうなるかという事は科学的に説明が困難でした。

これを説明する上で、そのとっかかりとしての可能性を提示しているのが量子力学の各研究です。量子は全ての物質を構成する要素ですが、その特徴は大変ユニークです。

その一つに、量子もつれ（quantum entanglement）という概念があります。量子もつれとは、粒子同士に強い結びつきができる現象で、いったん二つの粒子に量子もつれの関係ができると、どんなに遠く引き離されても、なぜか互いに影響しあい、かつ互いの状態に直接的に影響します。例えば、片方の粒子の状態が変化すると、それに応じてもう一方の粒子も瞬時に変化してしまいます。宇宙の果てまで離れていても、この変化は起こってしまいます。このような、時空を無視したような世界は、SFのようであり、理解する事は難しいでしょう。かのアインシュタインも、この理論を受け入れる事ができず、長い間物理学界では論争が起こっていました。しかし1969年にクラウザー、1982年にアスペ、1997年にはツァイリンガーによって実験や論証が行われ、「量子もつれ」は完全に証明されました。結果、2022年に彼らはノーベル物理学賞を授与しています。

よく以心伝心、虫の知らせなどと言われますが、これは量子力学的な世界観でもあり、また患者さんとその周りの人々の不思議な変化の関係も、量子力学的な世界を思わせます。かつては量子力学はミクロの世界でしか成り立たない、というのが定説がでしたが、しかし量子は全ての物質の中にあります。脳内にも量子が存在し、量子は我々の意識自体にも直接的に関係しているという学説は徐々に有力になりつつあります。

ジョンズ・ホプキンス大学の物理学者、アーミテージは、「宇宙の一部は、互いに遠く離れた場所にあるものであっても、つながっている。」と述べています。

量子力学の観点から大胆に仮定してしまうと、みなさんの考えの変化は、宇宙に時空を隔てて瞬時に伝わっており、みなさんの感じる心地よさ、喜びや安心感は宇宙全体に影響を与えている、という事が言えそうです。自分関係をよくしていく事は、臨床観察学上では自身だけでなく周囲に好影響をもたらしていますし、量子力学的には世界的宇宙的な影響がありそうです。

自分を大事にしていく事がいかに重大で有用であるか、ぜひその点を頭に留め、弛まず自分関係改善に向き合って、心地良さ、安心感、喜びを感じていきましょう！

なお、4月29日14時からのオンラインセミナーは、院長と私でこの不思議な物理の話をわかりやすく、楽しく実践できるように解説します。
ぜひご参加ください。